京都日帰り日記(2004年)

3月2日「一泊しないワケ」

今年早くも3回目の京都。
たまにはゆっくりしたいのだが、日帰りするのには忙しい以外にワケがある。
「1人で泊まるのが怖い」のだ。
だって、京都のホテルには幽霊がいっぱい。
だから、やむを得ず1人で泊まる時は必ず額の裏を覗く。
そして、もしもお札が張ってあったら絶対にその部屋には泊まらない。
だって過去に「実績」があったということだもの。
ああ、変なこと言ってすびばせん。
でも私は私なりに真剣なのだ。

3月9日 「型染め」

私は普段町で着るような型染小紋が大好き。
しかし、私のようなツテなし・資本ナシ・経験ナシの素人商人にとって、
オリジナル型染小紋は試練・難関の連続。
最もハードルが高いアイテムなのだ。

手描き友禅や刺繍、絞りは高価なれど一点からの注文がきく。
しかし、型染の着物や帯をオリジナルを制作するには、
それらの型紙制作から入らなければならず、その実費はかなりの額だ。
つまり量販しなければ大赤字、の立派なトホホアイテムと言えるだろう。

町の呉服屋店頭での種類が少なく、
あった場合でも仕入れ物が殆どなワケがこれでお分かりだろう。
其処に行くと志ま亀や赤坂福田屋は凄い!
仕入れではなくオリジナルの小紋着尺があれだけの量揃っているのだから。
実際問題、型紙の保管スペースだって大変なものだと思うのだ。


町屋つくりの典型、中庭には洗った型紙をこうして干している。

3月*日 「私の着物、あなたの着物」

呉服屋さんで「誰々さんの何々」「どこそこの何々」という勧められ方をよくされる。
また、着物で知り合った人に
「それって、誰々さんの何々ですよねー」などと聞かれることも多い。
矢継ぎ早に続くピイチクは、それらを纏った時の感想や見た時の印象ではなく、
丸暗記口上及び雑誌等で得たブランドデータ的情報ばかり。
ああもう、ピイチクうるせいよ。

ネットや雑誌や小売店で得ただけの知識や、
実体験による裏付けの無い話ほど、
聞いていて退屈なものはない。
HPで語っておいて、人の話や質問を鬱陶しく感じるのは、
自分勝手というものかもしれぬ。
しかし、私の話は少なくとも私自身が見て触ってまとって感じたことであり、
また、それらを読むのが嫌な人々は他のページに飛べばよいわけで、
底の浅いピイチクを直接やられたその時こそが
われながら気の毒かつ不快感のやり場に困る苛立たしい瞬間なのである。

こんなのは至極当たり前のロジックだが、あえて。
私の着物は「私の着物」。
そして、あなたの着物も「あなたの着物」であって「誰々さんの何々」ではない。
誰かが着ている着物は、着ているその人本人の着物なのだ。

3月11日 「壮観」

明日もまた京都日帰り。
今回は鴨川沿いの部屋に一泊しようかな♪などと思っていたところ、
税理士オジは「何考えてんの?」と一喝。
小さな夢をシュルルルル〜〜〜〜〜と萎ませた私が
「うるせいよ」と言えないのにはワケがある。
今この段階で奴に見捨てられたくない。この一言に尽きる。
すがる人間というのは、なんとも惨めで見苦しい。


画像は、染めた着尺を天日で干しているところ。
「裏窓」の手すりの間に板を通し、庭中央上空に設置された竿に引っ掛け固定する。
日々更新される文明の利器の登場で
最近では天日で干すことも少なくなったそうだが、
この日は江戸から来た知りたがりのため天日干しを実演してくれた。
サービスとはいえ「壮観」だ。
明日もまた何か見れるのかしら・・・。

3月11日 「カツラ?」

京都Mホテルでのパーティ会場でばったり出会ったのは、
ハードな作風で知られる小説家のおじたま。
特に親しいと言うわけではないが、時々東京でお世話になっている。
知人が少ないこの土地で知り合いに出くわすのは、なんとも心強いものである。

が、延々とガールフレンドの自慢話を聞かされ、
その内容のあまりのくだらなさにうんざり。
思わず着物を売りつけてやろうと直球を投げつけてみたが、
そこは百戦錬磨のモノカキ、巧みに話をそらされた。
とはいえ、くだらない自慢口を封じるにはセールストークが一番だと学習。
「お勉強」と言う言葉は大嫌いだが、人生これ学習の連続。
道理で辛いわけである。

ところで彼の髪の毛、日に日に濃くなっていく。
それとなく見つめていたら(さすがに聞きはしなかった思いやり)、
●立腺のホルモン治療で「毛がはえてきた」そうだ。
ほんとかい・・・?
しかし、それにしても「カツラ?ぷぷぷ」などと口走らず良かった。

3月12日 湯熨斗(ゆのし)

今年4回目の日帰り京都。本日は湯熨斗の品川さんへ。
メジャーで測るわけでもないのに、寸法どおりにピタリと仕上げていく。
※手元の棒は反物の仕上がり幅により替えていく。
一寸の狂いも、いや、ミリの狂いも無い作業は、全て経験と技によるもの。

シボシボの生地を湯気で伸ばすのはまだ理解できるのだが、
伸びきった鹿の子をシボシボに戻したりも出来るから摩訶不思議。

ちなみに品川さんは祇園祭船鉾(ふねぼこ)保存会の理事長で、
至宝の文化財「船鉾」を後世に伝えるべく助力している人。
年に一度のお祭りでは、
ジェントルな伝統工芸士も熱く激しくはじけるのだそうだ。

3月14日「だめだ、やられた」

メーカーさんでかかってた柳絞りの訪問着。
色といい、生地といい、シボシボ感といい・・・ああ、イチコロ!見目マイタイプ。
袷でももちろんだが、単衣の時期に是非おろしたいもんだ。


3月15日「今年も春抜き」

毎年新しい年が明ける度に夏衣にそわそわする。
春向きの優しい色目が似合わないせいもあるのだが、
着物・洋服共に冬物と夏物が好きな私は、
春袷の予算がどうしても後回しになってしまう。
そんな私にとって一番手っ取り早く安上がりな春支度は紗羽織だ。
4月までに脇の綻びを直さなければと箪笥の奥深くから引っ張り出す。
4月になっても冬向きの着物。
単衣の襦袢とちょっと明るめの紗の羽織、
それだけで充分春は味わえる。
 
真綿糸の紬に灰鼠色の霰紋紗の羽織。
地色と同色濃淡で仕上げた縫い紋は、直径7分で左三つ巴を。